鉄骨住宅やRC造住宅でのシロアリ被害について

シロアリの被害が出るのは木造住宅だけだと思っていませんか?
木造住宅にお住まいでなくても、部屋や玄関で羽アリを見かけたりしたら要注意です。
賃貸物件では建造物の安全性だけでなく、入居者の入居退去がくりかえされるなど、なにかと事件をひきおこすシロアリ被害。
賃貸物件にも多い鉄筋住宅やRC住宅でも、被害が多数報告されているのです。
今回は、「鉄筋造」「RC」建築のシロアリトラブルと対策をご紹介します。
目次
鉄骨や鉄筋コンクリート造でもシロアリ被害は発生します
「鉄骨造」「RC」の建物であればシロアリ被害に遭わないと思われがちですが、少しでも木材が使用されている建物であれば、シロアリはコンクリートの隙間からさえも入り込んで、害を及ぼすことがあります。
まずはそれぞれの建築構造と、シロアリ被害の注意点についてご紹介します。
建築物の構造の種類
建造物の構造には「木造」「鉄骨造(重量鉄骨、軽量鉄骨)」「RC(鉄筋コンクリート造)」などいくつかの種類があります。
木造・・・日本古来の工法で、梁や柱、筋交いといった木材を組み立てて家屋を建てる技術のことです。鉄骨造やRCと比べて、建築費も解体費も安いのが特徴です。
鉄骨造(重量鉄骨、軽量鉄骨)・・・鉄材を骨組みとして家を建てていく工法です。
RC(鉄筋コンクリート造)・・・鉄筋の枠組みにコンクリートを流し込んで作る頑丈な構造です。
これらの中でシロアリの被害が顕著に出やすいのは木造なのですが、鉄骨造やRCも全く被害を受けないかというと、残念ながらそうではありません。
鉄骨造やRCであっても内部に木材があればシロアリの食害に遭う可能性があります。
どちらも木造より頑丈で閉鎖的な内部構造をしていることが多いので、いったん住み着いたシロアリを駆除しづらいという難点もあります。
場合によっては、駆除代や施工代が木造と比べて高くなることもあります。
シロアリ被害の多い木材部分
鉄骨住宅では、土台部分や大引き、束、柱、筋交い、梁など、主要部分に鉄材が使われています。
しかし、合板や間仕切り壁、床根太、建具などには木材が使用されることが多いのです。
建物の主要な部分の多くに鉄骨が使われているという点では、木造住宅よりも深刻な事態には至りづらいですが、だからといってシロアリが住み着かないというわけでは決してありません。
木造ではない建築物であっても、近くに木や木材があれば簡単にシロアリに侵食されてしまいます。
断熱材には要注意
もうひとつ、シロアリの繁殖と関係が深いのが、住宅に使用される断熱材です。
発泡スチロール系の断熱材はやわらかく、シロアリが前進しやすい素材のため、巣が内部にはびこりやすいといわれます。
シロアリが進むときに作る土や糞でできたトンネルのことを「蟻道」といいますが、いわば巣のようなその道が発砲スチロールの中にたくさん広げられ、温床となっているケースが多く報告されています。
断熱材の中でもグラスウールと呼ばれる種類のものは、発泡スチロールとはちがって、綿のようなやわらかさを持ちます。
内部に蟻道は作られにくいようですが、このグラスウールは水分をよく含むため、湿気が大好物なシロアリにとって木材とグラスウールとの隙間はとても快適な状態になります。
断熱材はシロアリにとって栄養もなく、本来食糧ではありません。
しかし、巣をつくりはびこるのには格好の場所であり、前進するために食べて巣を広げることもあるのです。
シロアリが鉄骨や鉄筋コンクリート造へ侵入・被害を起こすことができる理由
木材を好んで食べるシロアリが鉄骨やRCにまで侵入してくるのには、シロアリの生態に深い理由があります。
シロアリには目がなく、視覚を持たないので、触れたものに沿って行動していくという習性があるのです。
その要領で蟻道を伸ばして木材へたどり着こうとするのですが、木材に到達するまでは目の前にあるものを本能的にかじって前進していきます。
このような理由から、たとえコンクリートに突き当たったとしてもかじり続けて前進し、木材にたどりついて侵食するということが起こるのです。
鉄骨や鉄筋コンクリート造の建築物でのシロアリ対策
木造建築へ甚大な影響を及ぼすシロアリですが、鉄骨造やRCだからといって油断していると、大変な被害を受けることになりかねません。
どんな資材を中心につくられた建造物であっても、多少なりとも木材を使用している限り、シロアリの脅威は他人事ではないのです。
安心して暮らすには、きちんとした対策を講じる必要があります。
ここで、シロアリ対策の二つの着眼点を知っておきましょう。
対策方法と必要性
シロアリへの対策として効果的なのが、建物の基礎を見直すことです。
新築工事の施工に「ベタ基礎」と呼ばれるものがあります。
これはまず「ベース部分」となるコンクリートを打ち、それが固まった後で「立ち上がり部分」の基礎を打っていくのですが、この二つの部分の間にできる「コールドジョイント」という隙間がシロアリの侵入経路になってしまう場合があるのです。
「一体打ち」という工法では、この「ベース部分」と「立ち上がり部分」を同時に作ることによって、隙間をなくします。
とても高度な技術が必要とされる工事なので、傾斜や基礎の高さなどによって施工可能かどうかが左右されるともいわれます。
一体打ちをすると、シロアリだけでなく湿気なども通さなくなり、シロアリの繁殖しやすい環境が作られづらくなります。
この一体打ちに加えて、基礎部分を高くし、風通しと日当たりともに良好な床下を設けることで、シロアリの繁殖を防ぐことができるのです。
まとめ
シロアリの被害は木造建築だけに起こるものではありません。
ときにはコンクリートさえも食べ進め、鉄筋造やRCの建物でも侵食される可能性があります。
実際に人目につく場所に現れるのは、その物件に住み着くシロアリのうちの数%だけだといわれています。
被害が大きくなって大変な思いをする前に、きちんと防蟻処理をしておきましょう。
・断熱材の配置や状況に気を配り、シロアリが好む湿気の多い環境をなるべく作らない。
・一体打ちや基礎の位置を高くするなどの工法で、シロアリ被害を予防した設計にする。
・それぞれの被害状況に合った防除工事を行う。
これらのポイントに特に注意しながら、シロアリの対策・駆除をしていきましょう。